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Designing Ours「自分たち事」のデザイン → ◯

by Katsumi TAZUKE

渡辺保史さんは、日本における情報デザインのパイオニアの一人であり、地域再生や科学技術コミュニケーション教育などの領域で活躍されていましたが、惜しくも2013年に急逝されました。

本書は生前の渡辺さんによって70%〜80%程度執筆されていた遺稿をクラウドファンディングを募ることによって、オンデマンド出版された書籍です。札幌在住時代にわずかではありますが、交流があり、その活動に憧れを抱いていましたので、案内を知ると同時にすぐファンドへの支援を行いました。

執筆当時からすると6年以上経過していますが、骨子となる内容は古びるどころか2018年の現在でもど真ん中のテーマであると感じます。ところどころに残る原稿未完部分は、渡辺さんが既にいないことを呼び起こすとともに、その空欄を埋めていくのは、私たち読者に委ねられているのではないかと感じました。それが正に渡辺さんの「自分たち事」のデザインであろうと思います。

渡辺さんはライター・執筆者としてのバックグラウンドをお持ちで、そこから科学技術コミュニケーション、そして非専門家と専門家を繋ぐ広義のファシリテーターとしての役割も担うようになってこられました。最近では様々な業界でもファシリテーションの重要性を説く声が聞こえており、その中で先駆的なキーパーソンが登場されています。近い活動のイメージとしてすぐに思いつくのは街づくり関連では有名なコミュニティーデザイナーの山崎亮さんでした。また、性格やタイプは違うようですが、建築家の藤村龍至さんもファシリテーションの重要性を強調されているおひとりでしょう。

比喩が適切かどうかわかりませんが、山をどこからどのルートで登るかの違いはあれ、「参加」「経験」「相互作用」を伴うワークショップ等を活用したコミュニケーションを目指す点では、情報デザインも街づくりも、建築も本質的には同じではないかと感じました。

情報デザインを仕事の領域にしており、ワークショップに関わることもある人間として、痛切に実感できる一文がありましたので引用しておきます。

*ワークショップ万能論
*ワークショップ気持ち悪い論批判
万能でないのは当たり前。だからといって、必要以上に警戒することも貶めることも得策ではない。一方ワークショップと銘打ちながら、その実態は旧来的な一方通行の知識伝達であったり、予定調和であったり、洗脳すれすれの集団陶酔出会ったりという「もどき」もある。
Designing Ours 第六章 触発と体験ーワークショップ p.145

まだまだ世の中にはびこっている「もどき」を排して、渡辺さんの目標とされていた社会全体にワークショップが遍在するように環境を整えていくのが、情報デザインなるものを生業としてきた私たちの役割ではないかと改めて思いました。

折に触れ何度も読み返し、実践していく一冊になると思います。


Katsumi TAZUKE
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